今回は、熊本日日新聞紙上で5月から4週に渡り「科学する人」のコーナーに掲載された山口真美教授(中央大学)のコラム記事をご紹介します。
この記事の内容が、本園が大切にしている「0歳児から切れ目なく続く保育」とも関連があるのではと感じましたので取り上げたところです。
テーマは「赤ちゃんの脳と心を研究する」
山口先生は、1歳未満の赤ちゃんの脳と心の発達を研究することで、その謎を追い続けておられ、2024年からは 日本赤ちゃん学会の理事長を務めておられます。
その一連の研究は、まだ言葉を話さない赤ちゃんがどのように世界を感じているのかを科学的に解き明かしています。
生まれたばかりの赤ちゃんは視力が約0.03ほどしかなく、景色はぼんやりとしか見えていません。
それでも、生後2か月頃には赤と緑の違いが、4か月頃には黄色や青の違いが分かるようになるそうです。
また、コントラストがはっきりした赤や青は目に入りやすい一方、淡いパステルカラーは見えにくいという特徴もあります。
顔の認識についても面白い発見があり…生後5か月頃には、赤ちゃんは正面を向いた人の顔を他のものと区別して見ていることが分かっています。
このとき、脳の右側の部分が活発に働くそうです。
更に、生後8か月頃になると横顔も顔として認識できるようになり、赤ちゃんの世界は少しずつ大人が認識する世界に近づいてくるようです。
こうした知見は、本園が乳児保育で大切にしている環境づくりを後押ししてくれます。
たとえば、もも組のお部屋では赤・緑・黄・青など はっきりした色合いの遊具を配置し、それらの動きを子どもたちが目で追いやすい環境を整えています。
また、赤ちゃんが顔を覚えやすい時期であることを踏まえ、私たち保育者は遊びの場面などで子どもが保育者を見返した時には、必ず正面から笑顔で語りかけるよう心がけています。
「保育者も環境」…このような日頃の丁寧な対応の積み重ねが、赤ちゃん自身の「見え方」や「感じ方」を育み、1歳、2歳…と成長していく過程へと自然につなげていくための大切な土台になると考えています。
こうして0歳で育まれた感覚が、次の年齢での遊びや探究心の芽生え、そして更にはその先の言葉や社会性の発達へとスムーズに結び付くように、クラス間の連携や引き継ぎを大切にしています。
ご家庭でも、赤や青など、はっきりした色の遊具や小物を取り入れていただくと、赤ちゃんにとって分かりやすい刺激になります。
また、おむつ替えやお風呂あがりなど日常のひとときに、正面から穏やかな声で話しかけていただくと、赤ちゃんはおうちの方の表情と言葉をしっかりと受け止め、より信頼感が深まると思います。
もう少し大きくなったら、いっしょに「これは何かな?」と問いかけながら考える遊びをすると、思考する力の芽が育っていくと思いますよ。
最後に…山口先生は、「大人の平均で作られた世界ではなく、多様性を前提とした世界を広げたい」と語られています。
本園が掲げる「一人ひとりの発達と個性をまるごと受け止め、0歳から未来へ切れ目なく育む」という理念は、まさにこの思いと重なります。
園とご家庭が手を取り合い、子どもたちの豊かな感性と可能性を伸ばしていければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします。