くうねるあそぶ

昨日何気なくテレビを見ていると、朝の情報番組で「会食恐怖症」についての特集が取り上げられていました。

「会食恐怖症」というのは、他人と一緒に食事をする場面を想像すると不安感に襲われ、吐き気や動悸などをもよおす症状だそうです…楽しいはずの会食が何故?

その原因の一つとして、完食するまで食べ続けさせられる幼少期の給食指導や周囲からの強制などがトラウマとなっているケースが考えられるとのことです。実際に放送では、大人になってからも、会食の場面では拒否反応が起きてしまう男性の体験なども紹介されていました。社交不安症(SAD)の症例のひとつとも考えられており、SNS上でも同じような体験をしたという声が多数上がっているようです。

「会食恐怖症」というワードは最近のテレビドラマでも取り上げられています…

NHKの「作りたい女と食べたい女」という、つい最近までパート2が放送されていたドラマです。

物語は、小食であるにも関わらず、料理に対する憧れからついつい多量の食事を作ってしまう一人暮らしの主人公が、2軒お隣に住む訳ありの女性に自分の作った料理をお裾分けしたことがキッカケとなり交流が深まっていくというストーリーです。

ある日、そんな2人の間の部屋に一人の女性が引っ越してきます。ある理由で家族と距離を置き一人暮らしをしている女性ですが、その理由というのが彼女が抱える「会食恐怖症」でした。

小さい頃から小食だった彼女に、両親は良かれと思ってたくさん食べることを要求し、片や学校では給食を完食するように強制されたことがトラウマになり、人前で食事をすることに恐怖感を覚え拒否反応を示すようになります。

主人公達との交流の中で 彼女はある心理カウンセラーと出会い、正式に認知療法を受けることになりました。

幼少期の食事指導が、将来の偏食のみならず心理的な治療が必要な程の症状につながるということは恐ろしいことだなと改めて感じます。食事だけでなく排泄などの生活習慣に関わることに関しても、結果を求めて「急ぐ」ことは禁物だと思います。「将来のため」「良かれ」と思ってやっていたことが、実は子どもの発達にとってマイナスの結果をもたらすこともあるということを、我々保育者は今一度肝に銘じる必要があるように思います。

かく言う私も、幼少の頃は肉類が一切食べられず、料理から取り分けて食べていました。しかし何かがキッカケになったということもなく、いつの間にか食べられるようになり、食事の好き嫌いは一切なくなりました。食べ物に対する味覚や嗜好は、成長と共に変わっていくこともあるのですね。

食事や排泄等の基本的な生活習慣は文字どおり「習慣」なので、劇的に変化することは望めません。また下手に急ぐことで、誤嚥や窒息等の重大事故につながらないとも限りません。

あまり構えることなく「食事指導は期間がかかるもの」割り切って、「匂いが嗅げる」「一口だけでも食べられる」「自分で量を調節できる」などとスモールステップを基本に、子どもが達成感を得られるような対応に心掛けていければと思います。

1988年に放映された初代日産セフィーロのCMでは「くうねるあそぶ」という糸井重里さんの有名なキャッチコピーが流れます(古っ💦)。恐らくは「食う」「寝る」「遊ぶ」に引っかけた言葉で、「細かいことに囚われずにゆとりを持って生きよう」というメッセージなのでしょうが…

園生活で考えた場合、「食う」と「寝る」は生命を維持するためにしっかり身につけたい生活習慣で、「遊ぶ」は  学びという側面も含めて、子ども達にとっての大切な体験の場だと思います。

これからも、子ども達にとってより良い「くうねるあそぶ」の環境が提供できるように心掛けていきたいと思います。

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