本日付けの熊本日日新聞朝刊「教育」コラムに『授業用AI「答え教えません」問い返し、別視点の考え促す~高校で実証実験 対話で多角的に考える力を~』と題して記事が載っていました。
記事は、NECグループが開発中のAIを使った実証実験授業が、広島県立広島皆実高校で実施された時の模様を伝えています。
「人種差別をなくすにはどうしたらいいですか?」という問いに対して、生徒が「固定概念をなくす」と答えると…
それに対してAIは、すぐに回答を示さず「固定概念とは何を指すのか」「なぜ思い込みが生まれるのか」などと 生徒達の答えにその都度問い返します。
生徒はグループで議論しながら20回以上AIとやり取りを重ね、考えを整理して発表しましたが、AIは最後まで解を提示せず、あくまで思考の伴走役に徹したとのことでした。
OpenAIは7月末にChatGPTへ学習モードを追加し、すぐ答えずに質問返しやヒント提示で能動学習を促す機能を取り入れたと聞きます。
最近教育界全体でも同じような傾向が見られ、授業で正解を示さず問い返しや視点の転換を促す「問いかけるAI」の導入が進んでいるようです。
「正解にたどりつくまでの過程をじっくり味わうことが、表現する力や、ものごとを多角的に見る力につながる」…この考え方は、当園の教育・保育の方針とも重なります。
記事にある「問い返しAI」は手段ですが、目的は主体性・協同・言葉による表現を軸に過程を大切にする学びを育てること。
当園の「向かい合い保育」は、その目的を幼児期にふさわしい方法(遊びと対話)で実現しており、方向性は一致しています。
当園では、子どもが自分で考え、試し、振り返る時間を何より大切にしています。
例えば 積み木の塔が倒れたときには「どこがぐらぐらしていたかな?」と一緒に振り返り、次はどうすればうまく積めるのかを子どもたち同士で考えます。
また、例えば 水遊びでは「どうして色水を混ぜたらジュースみたいな色になるの?」と原因を探し、絵本の後は保育者が「どんな気持ちになった?」と問いかけ、感じたことを言葉にしていきます。
うまくいかない経験も、そのまま大切な学びです。
「できた」よりも、その前にある試行錯誤の時間を、保育者がそばで見守りながら支えています。
新聞で紹介されたAIはあくまで「問いかけの仕方」のヒントをくれる存在です。
幼児期の学びの主役は、人との関わりと遊びですので、園でAI端末を新たに導入する予定は現時点でありません。
今は子どもたちには人との対話や体験を通して、心が動く学びを積み重ねてほしいと考えています。
ご家庭でも、帰り道や夕食の時間に、今日いちばん楽しかったことをひとつ教えてもらい、「どうしてそう思ったのかな?」とやさしく聞いてみてください。
急いで結論を求めず、子どもの言葉を最後まで聴き、思ったことを一緒に確かめていく…それだけで、考える力と言葉の力はぐんと伸びていきます。
正解を急がない学びは、時にまどろっこしく見えるかもしれません。
しかし、ゆっくり考えて自分の言葉で伝えられたという手応えは、子どもにとって大きな力になります。
園と家庭が同じ方向を向いて、子どもたちの「考えたくなる心」を育てていけたら幸いです。
※イラストは生成AIで作成しています。